Claude マガジン
AI導入・運用
藤田智也藤田智也

シャドーIT対策は何から始めるべきか|情報システム部門が最初に整備すべき可視化・承認フローと社内ルール

シャドーIT対策を何から始めるべきか迷う情シス責任者・セキュリティ担当者向けに、リスクの棚卸し、承認フローの設計、社内ルールの定着という3段階のアプローチを解説。CASB・SaaS管理ツールは手段の一つとして位置づけて紹介します。

シャドーIT対策は何から始めるべきか|情報システム部門が最初に整備すべき可視化・承認フローと社内ルール

企業におけるシャドーIT対策で最初にすべきことは、ツール選びではなく「自社にどれだけのシャドーITが存在し、どの業務領域にリスクが集中しているか」を可視化することです。次に、検知した非公認ツールを一律禁止せず、業務上の必要性を評価した上で承認フローを整備し、最後に社内ルールとして全社に定着させる。この可視化→承認フロー→ルール運用の3段階を順番通りに進めることが、情報システム部門が最初に整備すべき対策の骨格です。CASBやSaaS管理ツールは、この3段階を実行するための手段の一つであり、ツール選定そのものが目的ではありません。本記事では、情シス責任者やセキュリティ担当者が「何から手をつけるべきか」を判断できるよう、組織的なリスク評価の進め方から、承認フローの設計、社内ルールの定着までを具体的に解説します。

シャドーIT対策で最初にすべきは「リスクの棚卸し」

シャドーIT対策の現状と可視化

シャドーIT対策を何から始めるべきか迷ったら、最初にやるべきは個別ツールの導入検討ではなく、自社内にどの程度のシャドーITが存在するかのリスク棚卸しです。ここを飛ばしてツール導入から入ると、現場の実態と合わないルールができあがり、形骸化します。

IPA(情報処理推進機構)が2026年1月に発表した「情報セキュリティ10大脅威 2026 [組織編]」では、「AIの利用をめぐるサイバーリスク」が初めて3位にランクインし、内部不正や標的型攻撃と並んで、シャドーITが引き起こすセキュリティ脅威として警戒されています。また、ガートナーの調査によれば、企業のIT支出の30〜40%がシャドーITによるものとも言われており、その蔓延は深刻なセキュリティリスクとコストの無駄を招きます。

棚卸しで確認すべき3つの軸

リスク棚卸しでは、以下の3つの軸で現状を整理します。

  • 利用実態の軸:どの部門が、どのSaaS・クラウドサービスを、どの程度の頻度で利用しているか
  • データ機密性の軸:そのツールにどのような情報(顧客データ・個人情報・契約情報など)を入力しているか
  • 利用理由の軸:なぜそのツールが選ばれたか(公式ツールの使い勝手が悪い、承認に時間がかかる、など)

特に近年は、個人のアカウントでChatGPTやGeminiといったフリーの生成AIサービスを業務に流用するケースが急増しており、機密情報の漏洩リスクが高まっています。利用理由の軸まで踏み込んで棚卸しすることで、「禁止すべきもの」と「公式に取り込むべきもの」の仕分けができるようになります。シャドーITが発生する根本的な要因や事故の全体像は、シャドーITのリスクと情報漏洩事件を防ぐ対策ガイドシャドーITとは?中小企業に潜む事故事例と対策チェックリストで整理しているので、自社の実態と照らし合わせて読むと棚卸しの精度が上がります。

情報システム部門が整備すべき承認フローの設計

シャドーIT対策の2つ目の柱は、棚卸しで見えてきた利用実態をもとに、「新しいツールを使いたい」という現場の要望を正規のルートで受け止める承認フローを設計することです。承認フローがないままルールだけを厳格にすると、現場は申請せずに使い続ける道を選びます。

承認フローに必須の3ステップ

  • 申請の窓口を一本化する:現場が「このツールを使いたい」と思ったときに、どこに・どう申請すればよいかを明確にします。申請先が分散していると、そもそも申請という発想自体が生まれません。
  • 判定基準を事前に公開する:どのような基準で承認・却下されるかを事前に周知しておくことで、現場は申請前にある程度の見込みを立てられ、無断利用の心理的ハードルが下がります。
  • 判定までのリードタイムを決める:「申請から3営業日以内に回答する」など具体的な期限を設けることで、現場が「申請しても待たされるだけ」と感じて無断利用に走る事態を防ぎます。

判定基準の設計例

承認フローの判定基準は、データの機密性と業務の緊急性を軸に、あらかじめ3段階程度に整理しておくと運用しやすくなります。

【判定基準のサンプル(例)】

  • 利用不可(即時ブロック):個人向けファイル転送サービス(GigaFile便など)、未検証のフリー生成AI(機密情報入力の恐れがあるもの)
  • 条件付き許可:特定の業務部門のみ、アクセス権限を絞った上で利用を認めるSaaS(デザインツールや開発環境など)
  • 推奨(公式提供):会社が契約・管理しているセキュアなクラウドストレージ(Box、OneDriveなど)、法人契約のAIツール

実効性のある社内規定を作成する際は、生成AI利用ガイドラインの作り方で提供しているサンプルひな形をベースにカスタマイズすると効率的です。組織として安全なAI環境を整備する際は、生成AI導入支援はいる/いらない?コンサルvs内製化の判断基準も併せて確認し、自社で設計するか外部の支援を受けるかの判断材料にしてください。

可視化・承認フローを支えるツールの位置づけ

シャドーIT対策のポイント2の図解

リスク棚卸しと承認フローの設計を、手作業だけで継続的に回すのは現実的ではありません。ここで初めて、CASB(Cloud Access Security Broker)やSaaS管理ツールといった専用ツールが、仕組みを支える手段として登場します。あくまで「棚卸しと承認フローを回すための実装手段」であり、ツール導入自体が対策のゴールではない点を押さえておきます。

CASBは、企業内ネットワークとクラウドサービスの間にコントロールポイントを設け、通信経路を監視するセキュリティ特化のツールです。認可されていないSaaSへのアクセスを検知・制御し、機密データのアップロードを制限できます。一方のSaaS管理ツールは、従業員のアカウント情報や利用状況を一元管理することに主眼を置き、各SaaSとAPIで連携して誰がどのサービスを使っているかを可視化します。

自社の課題が「ネットワーク経路での情報漏えい防止」にあるのか、「アカウントの棚卸しとコスト最適化」にあるのかによって、優先すべきツール領域は変わります。情報漏えいリスクをネットワークレベルで断ち切りたい場合はCASBによる制御が適していますが、まずは現状の利用実態を正確に把握し、管理の手間やコストを最適化するところから始めたい場合は、導入ハードルの低いSaaS管理ツールからスモールスタートするのが現実的です。

比較項目CASB(Cloud Access Security Broker)SaaS管理ツール
主な導入目的未許可SaaSの利用ブロック・通信の監視アカウント管理・利用状況の可視化・コスト最適化
制御の仕組みネットワーク経路(プロキシ等)やAPIで通信を監視・遮断各SaaSのAPIと連携し、アカウント情報や権限を収集
得意な領域情報漏えい対策、マルウェア感染防御、アクセス制御退職者のID削除漏れ防止、重複ライセンスの削減
導入のハードルネットワーク構成の変更が必要な場合があり、比較的高いAPI連携が主体のため、既存環境への影響が少なく導入しやすい
代表的なツール例Netskope、Zscaler、Microsoft Defender for Cloud Appsジョーシス(Josys)、マネーフォワード Admina

社内ルールを定着させる運用サイクル

シャドーIT対策の最後の柱は、整備した棚卸し・承認フロー・ツールを、一過性の取り組みで終わらせず社内ルールとして定着させる運用サイクルを回すことです。

禁止と代替をセットで案内する

現場で新しい運用ルールを定着させる際の最大の注意点は、特定のツールを禁止するだけでなく、必ず安全な代替手段をセットで提示することです。「このツールは危険だから使わないでください」という通達だけでは現場の不満が蓄積し、より巧妙な隠蔽につながる恐れがあります。「代わりに会社が公式契約し、セキュリティ基準を満たしたこちらのSaaSを利用してください」と案内し、初期設定やデータ移行のサポートまで行うことが定着の鍵です。

定期的な見直しと従業員教育をセットにする

クラウドサービスは日々新しいものが登場しており、現場が利用したいツールも常に変化します。四半期に一度など、頻度を決めて利用状況の棚卸しと承認基準の見直しを行うサイクルをあらかじめ運用に組み込んでおきます。

あわせて、定期的な勉強会を通じて「なぜ未許可のツールが危険なのか」を論理的に説明し、従業員自身のITリテラシーを高めることも欠かせません。ルールを厳格にしすぎると生産性の低下に直結し、結果として隠れてツールを利用する動機を与えてしまうため、過度な制限を避けながら理解を促す姿勢が重要です。

SaaS管理ツールの選び方

新たな未許可SaaSの利用を検知した際や、承認フローの実装段階でSaaS管理ツールを具体的に比較検討する場合に押さえておきたい観点を整理します。

目的別に見る選定ポイント

  • 連携できるSaaS数と網羅性:自社で使われている、あるいは今後使う可能性のあるSaaSを幅広くカバーしているか。ジョーシスは300以上のSaaSと連携でき、SaaS管理とITデバイス管理(MDM)を単一のプラットフォームで一元化できる点が強みです。
  • コスト管理機能の精度:不要なライセンスやアカウントの重複を自動で検知できるか。マネーフォワード Adminaは310以上のSaaS連携と8万件超のSaaSデータベースをもとにした自動コスト管理が特徴です。
  • 既存のID管理基盤との連携:Microsoft 365・Entra IDなど、既に使っている認証基盤と連携できるかは導入負荷に直結します。ネットワーク経路の制御まで一体で行いたい場合は、Netskopeのように単一のWeb管理画面でCASBに加えてSWG・ZTNA・Web DLPまで包括的に提供するタイプも選択肢になります。

自社の目的が「アカウントの棚卸しとコスト最適化」なのか「ネットワーク経路でのアクセス制御」なのかを先に定めた上で、該当するツールカテゴリの中から連携範囲や既存基盤との親和性で絞り込むのが失敗しない進め方です。

シャドーIT対策に関するよくある質問

シャドーIT対策は何から始めればよいですか?

個別のツール導入からではなく、自社内にどの程度のシャドーITが存在し、どの部門・どのデータにリスクが集中しているかの棚卸しから始めます。棚卸しの結果をもとに承認フローを設計し、その運用を支える手段としてCASBやSaaS管理ツールを検討する順序が現実的です。

シャドーIT対策ツールにはどのような種類がありますか?

主に通信を監視・ブロックする「CASB(Cloud Access Security Broker)」や、社内のアカウントを一元管理して利用状況を可視化する「SaaS管理ツール」、デバイスを管理する「MDM」などがあります。自社の課題が情報漏えい防止か、アカウント管理の効率化かによって適切なツールが異なります。

なぜ従業員はシャドーITをしてしまうのですか?

多くの場合、悪意があるわけではなく「業務を効率化したい」「指定された公式ツールが使いにくい」といった理由からです。そのため、ただ禁止するだけでなく、現場のニーズを満たす使いやすい公式ツールを提供し、申請しやすい承認フローを整えることが根本的な解決につながります。

CASBとSaaS管理ツールはどちらから導入すべきですか?

情報漏えいをネットワーク経路で確実に止めたい場合はCASB、退職者のアカウント削除漏れや重複ライセンスを早急に解消したい場合はSaaS管理ツールが向いています。導入ハードルが低いSaaS管理ツールから始め、リスクの大きい部門に絞ってCASBを順次拡張するスモールスタートが現実的です。

まとめ

シャドーIT対策を情報システム部門が整備する際は、CASBやSaaS管理ツールの選定から入るのではなく、自社内のリスク棚卸し、承認フローの設計、そして社内ルールとしての定着という3段階を順に進めることが重要です。ツールはあくまでこの3段階を実行するための手段であり、目的そのものではありません。

具体的には、利用実態・データ機密性・利用理由の3軸での棚卸し、申請窓口と判定基準を明確にした承認フロー、CASB(Netskope・Zscaler・Microsoft Defender for Cloud Apps)やSaaS管理ツール(ジョーシス・マネーフォワード Admina)による可視化と制御、そして禁止と代替をセットにした運用ルールの定着が柱となります。この順序で対策を進めることで、情報漏えいリスクを抑えながら、現場の業務効率を損なわない持続可能なガバナンスを構築できます。

#シャドーIT対策#CASB#SaaS管理#セキュリティ対策#情報漏えい#ガバナンス#DX推進#シャドーit 対策

その作業、AIで自動化できます!

ClaudeやAIエージェントを活用し、複雑な会計ソフトの入力・図面や画像を用いた書類の整理・プロジェクト管理まで、あらゆる業務をAIエージェントが遂行。社内で運用できる状態までご支援します。