コールセンター生成AI活用事例7選|ソフトバンク・東京ガス・ソニーに学ぶ業務自動化のポイント
ソフトバンク・東京ガス・ソニーネットワークコミュニケーションズなど実在企業7社のコールセンター生成AI活用事例を紹介。音声認識・FAQ自動化・ACW削減・AIエージェント活用の4領域で、導入効果と具体的な実装ポイントを解説します。

コールセンターへの生成AI導入は、実証フェーズを終えて成果が数字で確認できる段階に入っています。東京ガスはAI導入によって年間1万1000時間の応対時間を削減し、ソニーネットワークコミュニケーションズは音声ボット活用でオペレーター応対件数を35%削減しました。本記事では、音声認識・FAQ自動化・後処理(ACW)削減・AIエージェント活用の4領域ごとに、実在企業7社の導入事例と実践ポイントを解説します。
コールセンターで生成AIが解決できる4つの課題
コールセンター業務の課題は大きく4領域に分類できます。生成AIの活用対象を絞り込むことが導入成功の第一歩です。
| 課題領域 | 主な問題 | 生成AIによる解決アプローチ |
|---|---|---|
| 応答時間(AHT) | マニュアル検索に時間がかかる | リアルタイム回答候補のレコメンド |
| 後処理(ACW) | 通話後の入力・要約に工数がかかる | 通話内容の自動要約・記録 |
| 品質のばらつき | ベテランと新人の応対差が大きい | ナレッジベース統合+回答の標準化 |
| 入電数の抑制 | 同じ問い合わせが繰り返し来る | FAQ自動化・音声ボット・チャットボット |
ガートナーは「2026年までに対話AIによりコンタクトセンターのコストが800億ドル削減される」と予測しています。日本でもすでに複数の大企業が具体的な成果を出しており、技術的な実現可能性は証明済みです。
事例1:東京ガス — AI回答支援で年間1万1000時間削減
東京ガスは、アクセンチュアの「AI Powered Knowledge Sharing(AIパワード・ナレッジシェアリング)」をコールセンターに導入し、2021年10月より運用を開始しました。
導入効果(公式発表):
- 年間1万1000時間の応対時間削減
- オペレーターから管理者へのエスカレーション率を14%削減
- オペレーターの平均応答時間が1件あたり10秒短縮
従来のキーワード検索ではなく、オペレーターが自然な文章で質問を入力すると、AIが内容を理解して適切な回答候補を瞬時に画面に表示します。2022年4月からは音声認識機能も追加し、通話中の顧客の発言をリアルタイムにテキスト化して自動で回答候補を提示する仕組みに拡張しました。
(出典: 東京ガス株式会社 公式トピックス https://www.tokyo-gas.co.jp/letter/2022/20220804.html)
事例2:ソフトバンク — Azure AI活用でコールセンター業務を自動化
ソフトバンクは2024年3月、日本マイクロソフトと共同で生成AIを活用したコールセンター業務自動化システムの開発を開始しました。2024年7月以降、自社コールセンターへ順次導入しています。
技術構成:
- Azure AI Search でRAG(検索拡張生成)を実装。社内データベースを参照し、顧客の問い合わせに最適な回答を自動生成
- 顧客の質問意図をAIが解釈し、膨大なナレッジから最適情報を収集・提示
狙う効果:
- オペレーターの回答時間を35%削減(見込み)
- 顧客の待ち時間短縮と応対の均質化による顧客満足度向上
(出典: ソフトバンク株式会社 プレスリリース 2024年3月18日 https://www.softbank.jp/corp/news/press/sbkk/2024/20240318_01/)
事例3:ソニーネットワークコミュニケーションズ — 音声ボットでオペレーター応対件数35%削減
ソニーネットワークコミュニケーションズは、SCSKが提供するクラウド型コンタクトセンターサービス「PrimeTiaas」に、Google Cloud の Contact Center AI(CCAI)を活用した音声ボット機能「PrimeTiaas VoiceBot Option」を導入しました。
導入効果:
- オペレーター応対に至った件数を35%削減
- 早朝・夜間を含む24時間受付を実現
- 有人窓口の役割の一部を無人窓口に移行
音声ボットが一次対応を担うことで、オペレーターは複雑な問い合わせの対応に集中できる体制を整えました。
(出典: IT Leaders「音声ボットでオペレーターの応対件数を35%削減─ソニーネットワークコミュニケーションズ」 https://it.impress.co.jp/articles/-/24513)
事例4:KDDI — 生成AIでLINEサポートの問い合わせを自動化
KDDIは2024年3月、LINEアカウント「auサポート」での問い合わせ対応に生成AIの導入を開始しました。
活用領域:
- チャット経由の問い合わせに対し、生成AIが顧客の意図を解釈して自動回答
- 契約内容・料金・手続き方法などのFAQ対応を24時間365日体制で提供
(出典: KDDI株式会社 法人向けコラム https://biz.kddi.com/content/column/smartwork/what-is-call-center-ai/)
事例5:アソビュー — 電話自動応答で70%超の自動化率を達成
アクティビティ予約サービスを展開するアソビュー株式会社は、AI電話自動応答サービス「IVRy(アイブリー)」を導入しました。
導入効果:
- 導入から1か月で電話の自動化率が50%を超え、最大で70%超を達成
- 対応可能な問い合わせ範囲をAIが自動判断し、必要な場合のみオペレーターに転送
(出典: IVRy株式会社 導入事例 https://ivry.jp/column/callcenter-ai-case-studies/)
事例6:株式会社Dai — FAQ導入で入電数を前期比16%・ピーク時比47%削減
株式会社DaiはAI搭載のFAQシステムを導入し、顧客が電話する前に自己解決できる仕組みを整備しました。
導入効果:
- 問い合わせ数が前期比で約16%減少
- ピーク時比較では約47%削減を実現
- オペレーターの業務負荷を大幅に軽減
(出典: IVRy株式会社 導入事例まとめ https://ivry.jp/column/callcenter-ai-case-studies/)
事例7:コールセンター事業J社 — 生成AIで通話要約を1件65秒短縮
生成AI技術を活用したACW(後処理)自動化の事例として、コールセンター事業を展開するJ社が通話後の要約・入力作業を自動化しました。
導入効果:
- 問い合わせの要約作業が1件あたり65秒短縮
- オペレーターの後処理工数を削減し、1日あたりの対応件数増加に貢献
(出典: ナンバーワンソリューションズ「生成AI導入で成功したコールセンターの6の実例紹介」 https://no1s.biz/blog/6354/)
コールセンターにおける生成AIの4つの活用領域
音声認識・リアルタイム回答支援
通話中の音声をテキスト化し、顧客の発言内容に合わせて回答候補をオペレーターの画面に自動表示します。東京ガスが採用した方式で、情報検索の手間を排除してAHTを短縮します。
導入時のポイントは、既存の社内ナレッジベース(マニュアル・FAQ・過去対応履歴)の品質整備です。RAGの回答精度は元データの品質に直接依存します。
FAQ自動化・チャットボット・音声ボット
顧客が問い合わせる前の段階で自己解決を促す仕組みです。ソニーネットワークコミュニケーションズの音声ボットやKDDIのLINEチャットボットがこの類型に該当します。
一次対応をAIに任せることで、オペレーターは複雑・感情的な問い合わせに集中できます。自己解決率が上がれば入電数そのものが減少し、コスト構造が改善します。
後処理(ACW)の自動化
通話終了後に行う対応履歴の入力・要約作業を生成AIが自動化します。J社の事例では1件あたり65秒の削減を達成しました。
生成AIは通話内容から要約・分類・次回アクション提案までを自動生成するため、均一なフォーマットで高品質なデータが蓄積されます。ベテランの暗黙知を形式知に変換するサイクルも生まれます。
AIエージェントによる全自動対応
2026年時点での最新トレンドが、人間の介在なしに問い合わせを完結させる「AIエージェント」活用です。Klarnaは OpenAI との連携で月間230万件のチャットをAIエージェントが処理し、応答時間を15分から2分弱に短縮した事例があります。
日本企業でも段階的な展開が始まっており、まず限定的なシナリオで自動完結率を高め、徐々に対応範囲を広げるアプローチが主流です。カスタマーサポートAIエージェントの詳細はカスタマーサポートAI導入事例7選|LINEヤフー・楽天・Klarnaに学ぶ応答時間半減の実装手順で解説しています。
導入前に確認すべき3つのポイント
1. ナレッジベースの品質整備
生成AIの回答精度はナレッジの品質に左右されます。古い情報・矛盾したマニュアル・分散した手順書がある状態では、AIが誤案内を出すリスクが高まります。導入前に既存ドキュメントの棚卸しと最新化を行うことが先決です。
2. Human-in-the-Loop(人間介在)フローの設計
コールセンター業務では誤った情報が重大なクレームやコンプライアンス違反につながります。AIの出力はあくまで「候補」として表示し、最終的な回答判断はオペレーターが行う設計が基本です。
生成AIのハルシネーション(事実に基づかない回答生成)リスクは存在します。回答根拠のドキュメントリンクを同時表示する設計にすることで、オペレーターが瞬時に事実確認できる環境を整えます。
3. 段階的導入とKPIの設定
全業務を一度にAI化しようとすると失敗します。AHT・FCR(初回解決率)・ACW時間・入電数といった定量KPIを事前に設定し、スモールスタートから効果を測定しながら展開範囲を広げることが成功の鍵です。
生成AIの社内データ活用に関する詳細な手順は【2026年版】生成AIで社内・自社データを活用する7ステップ|LINEヤフー年70万時間削減に学ぶRAG導入も参照してください。
よくある質問
コールセンターへの生成AI導入にかかる費用はどのくらいですか? 導入規模や活用領域によって異なりますが、クラウド型のチャットボット・ボイスボットサービスは月額数万円〜から利用可能です。RAGを用いたナレッジ統合システムの構築は数百万円〜が目安です。スモールスタートで効果を検証してから投資額を拡大するアプローチが一般的です。
生成AIとRPAはコールセンターで併用できますか? はい、相補的に使うのが効果的です。RPAは定型的なシステム操作(データ入力・転記)を担い、生成AIは文脈理解・回答生成・要約を担います。通話後に生成AIが要約した内容をRPAが自動でCRMに入力する連携が代表的な活用パターンです。
導入後の効果測定はどう行えばいいですか? AHT(平均処理時間)・FCR(初回解決率)・ACW(後処理時間)・エスカレーション率・入電数の5指標を導入前後で比較します。週次または月次でレポートを作成し、KPI未達の領域はナレッジの更新やプロンプト調整で改善サイクルを回します。
まとめ
コールセンターへの生成AI導入で成果を出しているのは、「全課題を一度にAIで解決する」ではなく、「音声認識・FAQ自動化・ACW削減・AIエージェント」のうち自社の最大課題から着手した企業です。東京ガスの年間1万1000時間削減もソニーネットワークコミュニケーションズの35%削減も、スモールスタートから実証を重ねた結果です。
まず既存ナレッジの品質を整え、Human-in-the-Loopを確保しながら、定量KPIで効果を測定する——この3ステップが、コールセンター生成AI導入を成功に導く共通の原則です。




