大企業DX事例3選【京セラ・竹中工務店・ライフ】現場のAI活用フローと成果
京セラ×Platio棚卸アプリ、竹中工務店StreamBIMによる図面共有刷新、ライフコーポレーションのAI自動発注(年間40万時間削減)など、大企業DX事例3選を実在企業の数字と一次ソースつきで紹介。現場発で小さく始めて広げる進め方を整理しました。

大企業のDX事例を知りたいなら、まず押さえるべきは京セラ・竹中工務店・ライフコーポレーションの3社です。現場発の小さな内製ツールから全社規模のAI自動発注まで、規模も業種も異なる3社が、いずれも「現場の業務フロー」を起点にDXを成功させています。数字と一次ソースつきで、それぞれの現場のAI活用フローと成果を解説します。
事例1:【製造業】京セラ × Platio|新入社員提案で棚卸アプリを1日で構築

課題:紙の棚卸リストで巨大倉庫を10分以上往復
京セラ株式会社の物流倉庫では、毎日の棚卸を紙のリストで運用しており、巨大倉庫と事務所の往復に1回10分以上かかっていました。目視チェックでの記入ミスも発生し、在庫精度の向上が課題でした。
現場のAI活用フロー:新入社員の「気づき」からノーコードで内製
特徴的なのは、ベテランIT担当者ではなく新入社員の提案から始まった点です。「棚卸用のアプリを作れないか」という声を受け、ノーコードツール「Platio」を活用して1日かからずに棚卸アプリを内製しました。エンジニアを介さず、現場の担当者自身が画面設計から入力項目まで組み立てています。
成果
- 棚卸データのデジタル化により、事務所への往復が不要に
- 目視チェックのミスを排除し、在庫照合を自動化
- 月額コストはノーコードツール費用のみ(数万円規模)
- 使い勝手の良さから全国の拠点へ展開
大がかりなシステム導入ではなく、現場の課題を最もよく知る人がノーコードで小さく作った点が、短期間での全社展開につながりました。出典:Platio導入事例 京セラ株式会社様 / 日経BP「京セラはたった1日で棚卸し業務をアプリ化」。
事例2:【建設業】竹中工務店「StreamBIM」|50現場以上で図面共有を刷新

課題:現場ごとの図面共有遅延と手戻り
建設業界では、最新の施工図面が現場に届くまでにタイムラグがあり、古い図面で作業を進めて手戻りが発生するケースが恒常的に存在していました。設計・施工・維持管理の各段階で関係者が増えるほど、書類管理は複雑化します。
現場のAI活用フロー:BIMクラウドと協力会社への橋渡し
竹中工務店はBIMクラウドプラットフォーム「StreamBIM」を全社展開し、PC・スマートフォン・タブレットからBIMモデルと2D図面を統合的に閲覧できる環境を整備しました。専門ベンダーの技術力を活用しつつ、現場経験豊富な社員が協力会社への説明・導入支援を担うことで、現場の理解と定着を両立させています。
成果
- 50以上の建設現場でStreamBIMを採用
- 設計・施工・製作・維持管理までを一元管理
- 同様の取り組みで清水建設は「Shimz One BIM」と「BIM 360 Docs」連携により現場巡回往復4時間 → 30分に短縮
外部の技術力と内部の業務理解を組み合わせることが、現場の反発を抑えながら大規模刷新を実現する鍵でした。出典:スーパーゼネコンのDX事例まとめ - 建設DX。
事例3:【小売業】ライフコーポレーション|AI需要予測で年間40万時間の発注を半減

課題:店長の経験と勘に頼る発注で、欠品率と廃棄率がばらつく
スーパーマーケットチェーンのライフコーポレーションでは、各店舗の店長による発注業務に依存していたため、ベテラン店舗と新人店舗で欠品率・廃棄率に大きなばらつきが発生していました。全店合計で年間40万時間を要する負担の大きい業務でした。
現場のAI活用フロー:全278店舗への段階的なAI自動発注導入
同社は日本ユニシス(現BIPROGY)と共同でAI需要予測自動発注システム「AI-Order Foresight」を開発し、2021年2月までに全278店舗で稼働を完了しました。販売実績・気象情報を元にAIが日別の発注数を算出し、賞味期限の短い日配品にも対応しています。一部店舗での検証を重ねてから全店へ広げる段階的なロールアウトが、現場の混乱を防ぎました。
成果
- 発注業務の作業時間を5割以上削減(年間40万時間が大幅に短縮)
- 生鮮部門で廃棄率10ポイント改善、発注時間3〜4割減
- 別の導入事例では廃棄ロス30〜80%削減、見切り・欠品ロスも約20%改善
生成AI×RPAとは?違いと組み合わせ事例6選で業務自動化を突破で解説しているように、AIによる予測と自動発注の組み合わせは、ルーチン業務削減の効果が大きい代表例です。出典:ライフ全278店舗AI需要予測自動発注システム導入 - IT Leaders / ダイヤモンド・チェーンストアオンライン。
3社に共通する、DXを定着させる現場フローの作り方
業種も規模も異なる3社ですが、成果につながったプロセスには共通点があります。
- 現場の課題を最もよく知る人を起点にする:京セラは新入社員、ライフは各店舗の発注担当者の声が出発点になっています。トップダウンの号令だけでは、現場に定着するツールは生まれません。
- 小さく始めて検証してから広げる:京セラのノーコード内製、ライフの段階的な全店ロールアウトは、いずれも一部の現場で効果を確認してから展開範囲を広げています。
- 外部の技術力と内部の業務理解を組み合わせる:竹中工務店のように、専門ベンダーの技術と現場経験者の橋渡しを両立させると、協力会社を含めた定着がスムーズになります。
自社でDXを進める際も、いきなり全社一斉導入を目指すのではなく、現場の課題が明確な部署から小さく検証し、効果を確認しながら展開範囲を広げる進め方が再現性の高い打ち手になります。
まとめ|大企業DX事例3選から学ぶ自社実装のポイント
京セラ・竹中工務店・ライフコーポレーションの事例に共通するのは、ツールの高度さではなく「現場発の課題起点」と「小さく始めて広げる」進め方です。
- 現場の課題を言語化できる人の声を起点にする
- 一部の部署・店舗で効果を検証してから全社に広げる
- 外部の専門知見と内部の業務理解を組み合わせる
自社のDXも、まずは課題が明確な業務・部署を1つ選び、小さな検証から着実に積み上げていくことが、持続可能な推進体制につながります。




